第三回は、受賞作品ではなくフロタ氏による天海先生の考え方をまとめた物となっています。貴重な資料の1つです。
1.天海の世界…
天海先生のことば「奇術はトリックではない。その使い方だ」
2.シルクの結び解け…
ここに述べるシルクの結び解けは、奇術師が奇術をやったのでなく<シルクがひとりでにとけたように見せる演技によって>より生かされていると思います。
しかし、演技をぬきにして、その扱い方だけを考えてみても、天海師が奇術家独得の、くせのある結び方をやるのではなく、如何に普通の結び方と同じように見せるか、そして、それが解けてしまうか、に細心の工夫を凝らしている。
3.サプライス・シルク・ヴァニッシュ…
GENII Vol.22.March.1958-No.7、に、天海師の演技と写真で、このロールヴァニッシュが解説されました。
そして、これは奇術研究にも転載され、天海師のトリックとして世界中の奇術家の間で有名です。
4.シルク・プロダクション…
本当にたった1枚のシルクの中から、色鮮やかな異なった色のシルクが物理的理論を超越して次々と出現します。
5.ロープ切り…
天海師の自然なロープ切り
6.2本の紐…
結ばれたシルクが紐から外れる有名な奇術ですが、大変難しいことを、何もしていないように見せることが天海師のすばらしいところです。
7.7枚のリーダーに続け…
天海師が左利きのため、このテクニックは、左利きの人でなければ出来ない見せ方が2〜3ヶ所出てきますが、これからも天海師が実際に手を動かして考えたということが良く分かると思います。
・左右の手に各々のパケットをパック上で持ちトップの1枚をガラスコップの中に立てます。そして、2枚目のカードをその前にフェイス上で置き、「これがリーダーです。」とその手前にパケットを伏せておぎます。
・リーダーを入れかえて、各パケットのトップをあけて見ると、リーダーと同じになる。
・パケットを入れかえて、そのトップを明けると、又、リーダーと同じになる。
・リーダーを入れかえて、パケットのトップを明ける、リーダーと同じ。
・パケットのトップの札を、右パケットは左リーダーの上に、左パケットは右リーダーの上に伏せておく。
・残った1枚のカードを左右入れかえる、そしてあけて見ると、リーダーと同じです。
・伏せたカードを明けて見ると、これもリーダーと同じになっています。
8.フライング・クィン…
4枚の黒の数札と、1枚のハートのQがある。
このハートのQをテープルの上に置くと、何時の間にか黒の数札と入れちがってしまう。
何度くりかえしても、Qは数札に変る。そして、最後にQは消えてしまう。
9.3枚のコイン…
たった3枚のコインを取り出して見せるだけなのに、天海師は如何に細心に、その1枚1枚に自分の全力を傾けて演技をし、考察をしているかが分ると思います。
<予想をはるかに超えた、充実した内容をもっているのが、天海師の奇術である>ことを、この奇術から知ってほしいと思います。
10.紙幣の復活…
客から借りたお札を箸ではさんで燃やしますが、あらかじめクリップでつってある封筒の中から出てきます。
あとがき
読むだけでも何か天海師の世界に引き込まれてしまいます。
実際にお会いしたことはありませんが天海の奇術のすばらしさは、きめの細かい、<人間性>によって生かされているところが多くあります。
だから、天海師の奇術を知るには、「天海師の人間を知ることも大切だ」と、考えるようになりました。
この資料はそういう意味でもとても大切な1冊です。